1.免疫力について
感染防御について
われわれの身体は3つの異なるシステムで外からの細菌やウイルスによる感染から守られています。
免疫力とはその中の主としてリンパ球からなる防御能力で、感染・ストレスから身体を守る機能のことです。
「皮膚粘膜」身体全体は皮膚で包まれ、また外部と交通のある消化管、呼吸器官、泌尿・生殖器の表面は粘膜に覆われていて、物理的な防護壁となっています。
粘膜面は消化液や粘液等の分泌液で覆われ、侵入してきた細菌などの微生物を殺傷し、異物を身体の外へ排出する役目を果たしています。
例えば、くしゃみ・咳・鼻水などがそれにあたります。「好中球」を主役とする自然免疫系。血液に含まれる白血球の中の主要細胞です。
皮膚が傷ついて、感染すると化膿します。この膿の中にはたくさんの好中球が含まれ、傷から侵入した病原体を攻撃・破壊します。
この好中球が感染から身体をまもる第一線の細胞、自然免疫系の主役です。
同じように病原体を食べるマクロファージ、ウイルスが巣くう感染細胞ごと殺傷するNK(ナチュラルキラー)細胞などもこの自然免疫系の仲間です。「リンパ球」を主役とする獲得免疫系。
血液や身体中のリンパ組織に含まれるリンパ球が主役となるのが獲得免疫系です。好中球とは異なり、感染に対して組織的な防御機能を発揮します。
即ち、多種類の働きの異なる免疫細胞が協調して、感染防御機能を発揮し病原体を集中攻撃します。
また、一度侵入してきた病原体を記憶し、同じ病原体が侵入すると今度は即座に反応し、以前よりも強い攻撃を行います。
例えば、「一度はしかにかかると免疫ができ、二度はかからない」と言われていますが、それは、一度はしかにかかったことにより免疫細胞がはしかの病原体を記憶しており、体内にはしかの病原菌が二度目に進入しようとするとすばやく抵抗し、一度目よりも強い攻撃を行い、すぐさま排除するからです。
当社で測定評価する能力は、主としてこのリンパ球の免疫学的能力です。
※リンパ球は高度に組織化されているゆえに、指揮系統に乱れが起きた時にアレルギーや自己免疫病が起こるのです。
がん(腫瘍)免疫について
異物である病原体を認識して攻撃排除する能力はがん細胞に対しても作用します。
癌細胞は遺伝子異常で発生し、異常に増殖すると同時に自己とは異なるがん抗原を発現しますので、免疫系に自己以外のものとして認識されるからです。
癌細胞の排除機能には、T細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞などが関与します。
中でも大事なのはT細胞とNK細胞ですが、問題は、それらのどちらも、加齢と共に機能低下することです。
癌に対抗する免疫機能の低下が加齢とともに進行することが、中年以降に増加する癌の発生と深く関わっているのです。
免疫細胞による癌細胞の傷害方法はいろいろありますが、ここでは代表的なT細胞とNK細胞による傷害方法を紹介します。
T細胞にもいろいろな亜集団がありますが、癌細胞を傷害するのはCD8陽性のキラーT細胞によります。
癌は自己とは異なる癌抗原を発現していますが、その癌抗原は、自己のID標識である主要組織適合抗原MHCクラスI蛋白の溝の中にあって、細胞表面に発現されます(MHC+癌抗原)。
キラーT細胞はこの(MHC+癌抗原)を認識して、癌細胞を殺傷するシグナルを出します。
しかし、既に述べましたように、癌細胞は遺伝子異常によりますから、正常の細胞のもつMHCクラスI蛋白を発現しないことも多いのです。
そのようなMHCクラスI蛋白の発現のない癌細胞でも、主要組織適合抗原類似のMICA/MICB(MICA/B)蛋白を発現することが多いのです。
T細胞にもいろいろな亜集団がありますが、癌細胞を傷害するのはCD8陽性のキラーT細胞によります。
癌は自己とは異なる癌抗原を発現していますが、その癌抗原は、自己のID標識である主要組織適合抗原MHCクラスI蛋白の溝の中にあって、細胞表面に発現されます(MHC+癌抗原)。
キラーT細胞はこの(MHC+癌抗原)を認識して、癌細胞を殺傷するシグナルを出します。
しかし、既に述べましたように、癌細胞は遺伝子異常によりますから、正常の細胞のもつMHCクラスI蛋白を発現しないことも多いのです。
そのようなMHCクラスI蛋白の発現のない癌細胞でも、主要組織適合抗原類似のMICA/MICB(MICA/B)蛋白を発現することが多いのです。
この抗原は正常細胞に発現することはないのですが、癌細胞やウイルス感染細胞には、発現します。
NK細胞はこのMICA/B蛋白を認識する受容体NKG2Dを通して癌細胞を認識し、殺傷するのです。
しかしながら、既述したようにその殺傷能力が加齢と共に低下すること、および、癌細胞自体が殺傷作用を免れようとするいろいろな仕組みが働き、癌の発症は加齢と共に増加していくのが現実なのです。
キラーT細胞とNK細胞による癌細胞傷害
MHCクラスIの発現がある癌細胞では、キラーT細胞(αβ型)が癌関連抗原を持った受容体を通して癌細胞のMHCクラスIと結合し、傷害作用を及ぼす。
MHCクラスIの発現がない癌細胞ではMICA/MICB分子発現することが多く、それをターゲットとしてNKGD2受容体(あるNK細胞やγδ型T細胞が傷害細胞を示す。
MICA/MICB分子は正常細胞に発現しないが、ストレスがかかると発現する。
MHCクラス発現癌細胞
MICA/MICB分子発現癌細胞
動脈硬化症について
コレステロールの沈着からなる粥腫(アテローム斑)といわれる病巣が動脈硬化症で一番問題となります。
従来、アテローム形成に関するプロセスは、LDLコレステロールの受動的な血管壁内侵入によるものと考えられてきましたが、ここ20~30年の研究により、慢性炎症が深く関与することが明らかになってきました。
動脈硬化病変を慢性炎症と捉える考え方は、古くは150年前の近代病理学の祖と言われたウイルヒョウに始まりますが、最近の細胞工学的進歩により、動脈硬化の病変はコレステロールが単に受動的に血管壁に沈着するのではなく、マクロファージやT細胞及び種々のメディエイターが関与した炎症性プロセスであることが分かってきました。
T細胞にもアテローム形成を促進するものと逆に抑制するものもあり、結局は免疫バランスの乱れが、アテローム形成に関与すると云えそうです。
免疫監視機構の機能低下
がん
免疫力の抗感染能力の低下
感染症
免疫力のバランスの崩れ
動脈硬化
脳血管障害
心疾患