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サプリメント

サプリメントの語源は、足りないものを補うという意味である。 
栄養学的には不足している栄養素を補給するときに使われる用語であり、栄養補助食品もしくは健康食品とも呼ばれている。 
つまりサプリメントの位置づけは食品であって、医薬品ではない。 
医薬品となると、その毒性はもちろん、薬交などについて厳しい検査に合格しなければならないが、食品としてのサプリメントにはそういう厳しい検査はない。 
つまり、サプリメントとして売られているものは、薬効性はもちろん、毒性についても、薬品のような厳しい検査をクリアしていないのである。 
毒性で特に問題になるのは長期間摂取による慢性的影響であるが、それも分からないのである。 

しかしそうしたサプリメントが市場にあふれているのが現状である。 
栄養素の不足による病気といえば、歴史的には脚気の場合のビタミンB1、壊血病のビタミンC、くる病のピタミンD、夜盲症のビタミンAなどが有名で、素人でも知っている。 
例えは、各種のビタミンの効能の表示を見ると、科学的な工ビデンスがあるものに加えて、癌の予防、動脈硬化の予防、疲労の回復、風邪の予防、いらいら防止など、本当に効能があるのかどうか分からないものも書かれている。 
ピタミンCやEは抗酸化作用があるので、癌の予防や動脈効果の予防に効く可能性はある。 
また、抗酸化作用を介して免疫機能の低下を防ぐ可能性もあり、感染の予防にもなるかもしれない。 

しかし可能性と「実際に効果がある」こととは別のものである。 
まして疲労やいらいらの防止のような主観的なこととなれば、信ずるしかないものではなかろうか。 
信じて摂取すれば、心理的効果により、ある程度の効果は期待できるであろう。 
最近はサプリメントに抗加齢効果を期待するものが多い。 
細胞・細織に含まれている物質のなかで加齢とともに減少するものがある。 
それら加齢とともに減少する物質を補給すれは、加齢の進行が遅くなると期待するものである。 
そのなかに、Coenzyme Q-10や亜鉛(Zn)がある。 
Coenzyme Q-10は細胞内のミトコンドリアに多く含まれ、エネルギー生産に必要な成分である。 
食品ではレバーやモッ、牛肉、カツオに多く含まれ、脂溶性のピタミン様物質でピタミンQとも呼ばれている。 
そのCoenzymeQ-10が原料から抽出された単体として、サプリメントとして販売されている。 
通常、体内での産生、食事からの補給によって維持されているが、加齢に伴い減少するので、サプリメントとして摂取すれば良いはずだというのである。 
老化を防止できるということで、Coenzyme Q-10は今やコマーシャルで一番に宣伝されているサプリメントになっている。 

例えば、化粧品に入れて皮膚の細胞に補えば、皮膚が若返りますよということである。 
Coenzyme Q-10はたしかに加齢とともに減少するが、それをサプリメントとして摂取しまた外から補うことにより、老化の進行が遅くなったという科学的証拠はまったくない。 
しかし、サプリメントは食品であるから、効果とか毒性については検査義務がなく、証拠を提示する必要もない。 
コマーシャルにつられてのんでみると、効いているような気がするといった程度である。 
同じ主観的な現象である空腹感は、食事をとれば胃の充足感により、もっとも単純明快に満足感が得られる。 
血液を採取して計れば、血糖も上昇し、摂食の効果を客観的に証明することもできる。 
しかし、サプリメントによる効果は今のところ心理的なものであり、その効果を実証するのは難しい。 
亜鉛については、その体内における加齢に伴う減少は半世紀前から知られている。 
亜鉛が補酵素として活性化に関与する酵素の数は、体内に300種類ほどある。 
つまり亜鉛は酵素の働きを介して、たんばく質の合成や、免疫システムへの関与、ホルモン分泌の調節などに、深く関係している。 
 
老化や病気の時に亜鉛が減少することは分かっているが、それでは亜鉛を摂取すれば、症状が改善するのかといえは、その効果のほどは、いまだに不明である。 
ここに来て、サプリメントの効果についても工ビデンスが必要であるという動きがやっとでてきた。 
科学的証拠がどんな場合でも必要なのである。 
ヨーロッパにはZinkageという亜鉛に関する研究プロジェクトがある。 
研究のネットワークを作って、亜鉛摂取の効果を科学的にはっきりさせようという研究班である。 
あと2~3年で結果がでるとのことで、期待している。 
イソフラボンは、大豆胚芽に特に多く含まれるフラボノイドの一種である。 
分子構造上、女性ホルモンのエストロゲンと似ていて、工ストロゲン作用を示すことで注目されている。 
欧米では、日本人の長寿の秘訣の一因は、大豆イソフラボンだとして研究している人もいる。 
このエストロゲン作用を有するイソフラボンが骨粗鬆症に効果があるかどうかを調べた論文がある。 
6カ月から12カ月という長期間の摂取でみると、骨粗鬆症が改善する人もいるが、逆に進展する場合もあると報告されている。 
納豆や豆腐を食することで摂取するイソフラボンは量的に少ないが、サプリメントとして摂取する量はその何倍も多い。 
効果があれは良いが、効果がない場合には、多量に摂取しつつけることが有害になる場合もあるといえる。 
効果があるか否かを見るには、医療機関での検査が必須になる。 
ビタミンEも抗酸化作用があり、老化を防ぐ物質として宣伝されているものである。 
いろいろなものにピタミンEを入れて売られていた。 
しかし、今は影を潜めている。 
それは効用もあるが副作用もあるというエピデンスが分かってきたからだ。 
ピタミンEは、ビタミンAと同様に脂溶性のものである。 
脂溶性のものは体内に蓄積する危険性がある。 
ピタミンB類やCは水溶性なので、少々過剰にとっても、尿から排出されるが、脂溶性のものは排出されにくいのである。 
その意味ではCoenzyme Q-10も脂溶性であるので、長期間大量に摂取した場合に、蓄積したものが、副作用をもたらす危険性は否定できない。 
抗酸化物質といえば、ポリフェノール(Polyphenol)が話題となっている。 
ポリフェノールとは、同一分子内に複数のフェノール性水酸基(ベンゼン環、ナフタリン環などの芳香族環に結合した水酸基)やハイドロキシ基をもつ植物成分の総称で、はとんどの植物に含有され、その数は5,000種以上に及ぶ。 
光合成によってできた植物の色素や苦味の成分であり、植物細胞の生成、活性化などを助ける働きをもつ。 
代表的なポリフェノールとしては、フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラポン、イソフラボン、フラバン)、フェノール酸類(クロロゲン酸:コーヒーに多く含まれる)、工ラグ酸類(イチゴなどに含まれる)、リグナン(ゴマに多く含まれる)、クルクミン類(ウコンに多く含まれる)、クマリン類(バセリ、モモ、カンキッ系に多く含まれる)が挙げられる。 
いすれも、通常の食事に含まれるものをとっている分には問題がない。 
例えば、赤ワインなら200mlくらいが適量だといわれている。 
しかし、それらを植物から抽出し不自然に大量にとるようになると、必す間題が起こってくる。 
栄養はオーケストラのようなものである。 
どのパートも出すぎてはいけない。 
ハーモニーが大事なのである。 
実験的に見られるある物質の作用を拡大解釈して、その物質を大量にとれば、それは体のハーモニーを乱すことになる。 

「過ぎたるは及ばざるが如し」である。 
サプリメントを売り出している人たちが、この身体全体のハーモニーを十分理解しているかどうか疑問である。 
健康の基本は、まずバランスのとれた通常の食事からの栄養摂取である。 
サプリメントをとるなとはいわないが、過剰な期待は禁物である。